委員長はエッチでした
第2章 責任
「彩香さん、間違った情報は、正しく……
伝えないと……また、あんな風に……」
教室で繰り広げられる
噂話を聞いて
なおも行こうとする黒崎を
ぴしゃりと注意する。
「いいんだよ、黒崎、
別にあたしは、何を言われても、大丈夫だから」
「な……んで?
俺は……いやだ、彩香さんが悪く……
言われるのは……腹が立つから……っ」
屋上へと
続く階段を
登りながら
少し
息が上がっている。
あたしは
一瞬
言葉を飲み込んだ。
あたしは
子供の頃
乱暴で手が付けられない
ガキ大将だった。
お父さんが居ない
お父さんが誰かも知らない
お母さんは
若くて派手だから
その事を噂する
大人や子供に
いちいち歯向かっていた。
小学生の頃
男の子に怪我をさせて
お母さんと一緒に
その子の家に
謝りに行って
帰りに近所の公園で
学校帰りの結城さんに会った。
その頃は高校生だった
結城さん
一緒に遊んで帰ると言って
お母さんは先に帰ってた。
「彩香ちゃんはお母さんを、
悲しませたくはないんだよね?」
「当たり前だよっ、
あいつ、お母さんの悪口言ったからっ」
「でもそうやって乱暴しちゃったら、
お母さんは悲しむよね?
お母さんに誉められる事しなきゃ、
いや、お母さんが誉められる事かな?
……分かんないかな?」
お母さんに誉められる
お母さんが誉められる。
今までない考えだった。
悪口や噂に
いちいち反応して
暴力を奮って
守ってるつもりが
いつも
悲しい顔を
させていたのに気付いた。
……それから
あたしなりに考えて
勉強を頑張ったら
お母さんは誉めてくれる。
学校の先生も誉めてくれる。
家の掃除をしたら
ご飯を作ったら
そうやって
少しずつ
努力していった。
『お父さんが居ないのに
偉いわね〜』
『お買い物もしっかりしてるし、頭もいいんですって』
『あれだけ働いて、ちゃんと教育しているのね〜
凄いわね、お母さん』
近所の評価
お母さんを見る目が変わり
今の完璧なあたしが
作り上げられた。
噂話は嫌い
何も知りもしない癖に
時々
的を得ている。
あたしは慣れているから
何を言われても
大丈夫だから。