
委員長はエッチでした
第10章 上書き
桜木 翔矢side
『デブ翔っ、あんたなんか最低っ、
大嫌いっ』
昔嫌がらせをする度に
彩香が俺に
言った言葉。
喧嘩ばかりして
あの日も
そうだった。
いつもの
喧嘩の理由は
下らない
些細な事。
俺と彩香は
喧嘩しながら
近所の公園にある
大きな木を
よじ登っていた。
競争してたのか
俺は彩香を
追いかけてて
俺の上を上る
彩香の足を
思わず掴んで
引っ張ったんだ。
悲鳴を上げて
落ちそうになった彩香は
ぎゃあぎゃあ
喚きながら
俺の肩に
蹴りを放った。
ずるりとバランスを失い
あっというまに
落ちて行く俺。
落ちる時に
鋭い枝が
俺の体を傷付けて
消えない傷が残った。
木から落ちて
血も沢山でた。
俺は妙に冷静な
気持ちで
ただ横たわる。
『デブ翔、意地悪、大嫌い』
俺を恐れる奴ばかり
回りにいる
ガキどもの顔が
『ざまぁみろ』
言ってるように見えた
嬉しそうな顔にも
誰も心配なんかしない
怪我をしても
両親だってそうだ。
ただいつも
一人で手当てしてたから
面倒くさいと
思っただけ。
それなのに
彩香だけは
違った。
『デブ翔〜っ、死んじゃだめ〜っ!』
木から下りて
慌てて俺の傍に
ひざまづく。
俺はなんとなく
目を閉じて
からかって
やろうと思った。
『デブ翔〜っ?生きてるよね〜っ?
このままとか、ないよね〜っ?
……大嫌いとかっ、嘘だからっ、
だから……っ、ごめんっ、
生きかえってぇ〜!』
びぇ〜!
大粒の涙で
泣き出した彩香。
どんなに意地悪しても
絶対泣かなかった彩香。
生意気だから
泣いた顔が
見たかった。
俺の意地悪で
泣く姿が
見たかったのに。
………思ったのと
違っていた。
『こんな奴、ほっとこうよ』
『タヌキ寝入りなんじゃないの?』
回りにいる
近所のガキ連中。
俺を心配して
泣いてくれたのは
彩香一人だけだった。
泣いている顔が
見たかった。
ただそれだけで
意地悪したかった。
だけど
あんな涙は
俺が思ったモノじゃない。
