
委員長はエッチでした
第11章 友達との一線を越えて
水族館なんて
ろくに来た事なんかなかった。
あたしが
小さな頃は
お母さんは仕事と
夜のバイトで忙しかったし
それ以前だって
忙しかったみたいだし
考えたら
お母さんは仕事ばかりで
どこにも
出掛ける事はなかった。
誰かと出掛けたのは
……結城さん
ただ一人。
ゴールデンウィークとか
お母さんと一緒に
遊園地とか
テーマパークに
あっちこっち
連れて行って貰った。
確かな幸せが
そこにはあった
……まやかし
だったとしても。
水族館に着いた瞬間
はしゃいでいる
自分に気付いた。
亮の手を引いて
はしゃいで
あっちこっち
連れ回して
戸惑いながら
嬉しそうな
笑顔で
一緒に来てくれる。
「亮っ、こっち見て〜!」
「ちょっと待って彩香さん、
魚は逃げないから……っ」
『そんなに急がなくても、
魚は逃げないよ、彩香』
結城さんの昔の姿と
亮の姿が
一瞬重なる。
……似ている?
そんな馬鹿なことっ
亮が髪なんか切るからっ
髪を切って
眼鏡を外したからっ
だけど……
気付いてしまった。
そんな事
思った事も
一度もなかったのに……
眼鏡を外して
髪を切った
亮の姿は……
結城さんの
昔の姿に
似ていた……。
その事に気付いて
自分でも驚いた。
そんなつもりなんかない
思った事も
一度もなかった。
それなのに
どうして……?
巨大なトンネル水槽
その真下に立つ亮。
薄暗い水族館なのに
揺れる水の流れから
洩れる光を浴びて
浮かびあがる
亮の姿に
改めて
見惚れてしまう。
ああ
亮はやっぱり綺麗で
素敵な人なんだ。
眩しくて
目を反らして
しまいたくなる程に。
亮が眩しくて
好きで
堪らない。
「すごく、綺麗、
ありがとう、連れて来てくれて」
流れて泳いで行く
魚達を眺めながら
うっとりと
溜め息をついた。
眩しいモノを
見るように
亮が目を細めて
呟いた。
「魚も綺麗だけど……、
彩香さんも綺麗だ……、
まるで内側から
輝いてるみたいで……
どうして……?」
亮の手が
あたしの頬に
そっと触れる。
