委員長はエッチでした
第13章 泣かせたかった
骨折した事が大騒ぎになり
実は木の枝で
ざっくり切った
傷口もあったけど
目に見えないし
たいしてそこは
騒がれずに
病院では骨折の
ついで扱いだった。
でも、実はなかなか
血が止まらず、
適当に自分でも
手当てして
後からまた
傷口が開いたりした。
近所の小さな病院だったからか
こっちの怪我のほうが
厄介だった。
「あの時地味に怪我しただけで、そのあとは離婚するとかで揉めたし、急に引っ越したしね?
すぐに再婚とか言われて、びびったけど、二回目だけじゃなかったし」
笑いながら
何でもない事のように
軽い言いかたをした。
「……笑って話すような事じゃないでしょ?」
彩香はやけに
真面目な顔をして
俺の目をじっと見つめる。
……笑ってないと
やってられなかったんだよ。
二回目、三回目と
ビジネス絡みでか
再婚を繰り返す父親。
デブは親の恥だと
ダイエットと言われて
あちこちの寺だのを
たらい回しにされて。
人から嫌われモノだった俺が
急に
愛されなきゃいけない
そんな愛想のいい
ガキにならなきゃ
いけなかったんだ。
お前に一体何が
分かるっていうの?
知らない癖に
俺の事なんか忘れて
毎日、友達に囲まれて
笑って過ごしてたんだろ?
ムカつく……っ。
視線を上げれば
浴衣の合わせから
はらりと捲れ上がって
隙間から覗く
彩香の茂み……。
どんな意地悪にも
泣かずに
いつも俺に歯向かってきてた彩香
他の奴らは
すぐに泣くのに
酷い事も言ったのに
絶対、泣かなかった。
喧嘩っ早くて
女の癖に強くて
どうしたら泣くのかと
考えて
エスカレートしていく
自分を感じていた。
それが……
俺じゃなく
あの男にずっと
泣かされてたと知って
……腹が立った。
俺はこいつを
いつの間に守ってるんだ?
泣かせたいと
今でも思ってるんじゃないのか?
「……ストーカーに追われてる癖に、良くそんな格好でうろちょろ出来るよね?
……ひょっとして、襲われたいの?」
「……はあ?何を言って……っ」
笑おうとした
彩香の顔に唇を寄せて
「……ちょっと…っ、翔矢?」
文句を言う
うるさい口を塞いだ。