委員長はエッチでした
第13章 泣かせたかった
お互いに何も言わずに
一瞬、見つめ合った。
濡れたような
黒くて大きな瞳
吸い込まれそうになる。
そうしてまた
飽きる程、キスをして
思い切り
抱きしめたい。
そんな衝動を
ぐっと押さえて
目を反らしてしまう。
……今、見たらダメだ。
気まずい空気の中
鳴り響く
ケータイの着信音。
俺のケータイだ。
液晶画面には
『黒崎 亮』
……今、その名前を見たくはなかった。
「亮だな……」
夢から覚めたような気分だ。
ハッとしたような
彩香の顔。
体を起こして
身だしなみを整えている。
「……待てよ、部屋まで送るから」
足を引き摺りながらも
歩こうとする
彩香の腕を掴む。
危ないから送るとか
俺が言える台詞じゃないな。
「もう、歩けるから……っ」
抱き抱える事も
ダメなんだ。
「それでも、送るってば!」
着信音はいつの間にか
鳴りやんでいた……。