委員長はエッチでした
第14章 命懸けで愛されて
「どうしてそこまでして、あたしにこだわるの?あたしじゃなくても、もっと素敵な人だっているじゃない、どうしてあたしなの?」
子供の頃は
大好きなお兄ちゃんだったのに
いつの間にか
大嫌いな義理の
お父さんになり
今ではただ、怖い存在。
一緒に過ごした時間が
結城さんを
狂わせたの?
抱きしめられる
腕をそっと離して
至近距離で
じっと見つめられる。
「子供の頃から、ずっと彩香を見守っていた。彩香の存在が俺を救ったんだよ、あの狂った家の中で、君だけは眩しくて、無垢な天使だった。」
子供の頃に過ごした
結城さんの家を
思い出す。
大人は皆、
夜の仕事でいなくて
食べきれない程のご馳走
沢山の玩具に囲まれて
子供だけの無法地帯。
しょっちゅう喧嘩して
壊れる玩具
散らかる食べ物
誰かが泣いて
誰かが怒って
注意する人もいない。
そんな環境。
結城さんの弟が
わざと玩具を壊してて
あたしが注意すると
「また、新しいのを買って貰えるから、これでいいんだよ」
と言われた。
結城さんの妹が
ピザを少し食べて
まだ食べたかったのに
ゴミ箱に捨てられた。
「美味しくないから、いらないし」
すべてにおいてそんな調子。
一番年上の
お兄ちゃんである
結城さんは
いつも難しそうな
本を読んでて
何かある度に
あたしが呼ぶと
「ほっといていいんだよ」
そんな事かと
言わんばかりの態度だった。
あそこはいつも騒がしくて
どこかおかしかった。
最初は受け入れて貰えなくて
だんだんと仲良くなると
いつの間にか
結城さんは本を読まなくなり
優しいお兄ちゃんへと
変わっていった。
『お兄ちゃん、大好きっ』
いつも慕っていた。
「お兄ちゃん、大好きって、良く言ってたよね?あの頃の結城さんは、優しくて好きだった」
ぽつんとした
あたしの呟きは
バスルームに
妙に響いて
暖かいお湯の温度と
密着した体で
体温が上昇する。
急に俯く結城さん
肩を震わせて
少し黙り込んで
また、顔を上げて
優しく引き寄せられた。
「……もう一度言ってくれ、大好きだと、俺を…好きだと言って欲しい」