委員長はエッチでした
第4章 逃げない
「好きなのに……」
声が震えて
涙が零れた。
黒崎は真っ直ぐな瞳で
あたしを
探るように
見つめて
目を反らすように
俯いた。
「俺は……その……
自分の気持ちが……
良く分からない……」
「あたしは黒崎を拒まないよ?
あの時は、覚えてないけど……」
「俺は……
彩香さんのあんな顔を……
見たくはないんだ……」
意味が分からない。
あたし
黒崎に振られちゃったってこと?
なんだか
惨めな気分になった。
最初は確かに
からかって
いたけど。
いつの間にか
あたしは
こんなにも
黒崎が好きに……。
スッと立ち上がり
黒崎の家のドアノブを
掴んだ。
「彩香さん……っ、
家には……帰らないほうが……!」
あたしの腕を
掴んで
引き留める黒崎を
睨みつけた。
「行き場所なんて、家しかないものっ、
お母さんが帰って来たら、大丈夫だから、
今までだって、そうじゃない!」
黒崎の手の力が緩む。
その手を振り切って
ドアの外へ出た。
「彩香さん……!」
ドアを閉じても
追いかけても
来てくれない。
ほんの少し
ドアの前に立ち
歩き出した。
ガチャリと音がして
黒崎だと
思って
振り返る。
「……あれ?
ああ、黒崎くんの、彼女かな?」
……黒崎じゃなかった。
追いかけてもらえると
期待したあたしが
馬鹿みたいで
「彼女なんかじゃないですからっ!」
思わず
叫んでしまった。
その人は
目が一瞬点になる。
優しそうな顔立ちの美形
髪は栗色でふわふわで
愛想笑いが固まっている。
隣に住む大学生。
たぶん
この人の事なんだろうとは
すぐに思ったけど。
我にかえって
慌てて謝る。
「……ごめんなさいっ、
失礼しましたっ」
バタバタしながら
走って行く。
それを見て
その人が
呟いた言葉は
耳には入らなかった。
「……相変わらず、ウザい女」