委員長はエッチでした
第4章 逃げない
呆然としたまま
ふらりと
家に帰った。
何もかも
どうでもいいように
思えて
玄関の靴を見て
お母さんが
まだ
帰ってない事に
気付いた。
……黒崎が
あたしを
好きじゃないのなら
あたしなんて
別に
どうなってもいいように
思えて
価値のない
人間みたいに
思えた。
「お帰り、
……何かあったのかい?涙の跡がある……」
あたしを出迎える
結城さん
顔を見るなり
手を伸ばして
頬に手を伸ばされた。
びくりとして
後退りする。
今日はビールを飲んでいない。
シラフでなんて
耐えられない。
大丈夫
お母さんは
もうすぐ
帰って来る時間。
「何もないよ?」
笑いながら言うと
結城さんは眉をひそめて
あたしの顔を
覗き込んだ。
「俺は彩香を何年見て来たと思ってるんだい?
嘘をついてる事も、全部分かってしまうからね。
どうして俺に、何も言ってくれない?」
「……もう、子供じゃあ、ないから、
自分の事は、自分で解決するもの」
二階の階段を上がって
自分の部屋に行きたいのに
あたしの前に
立ち塞がる。
過剰な父親ぶりに
イライラする。
子供の頃は
確かに
色々相談していたけど。
優しい
近所のお兄さんとして。
でも
今は違うから。
何も打ち明ける事なんて
何もないよ。
だから
邪魔をしないで
あたしの心の中にまで
土足で勝手に
入り込まないで。
「そんな事ないだろう?
強がっても分かるよ、彩香は本当は
弱い女の子なんだから」
頭の中が
カアッとなった。
「……あたしは、弱くなんかない……っ」
……ダメだ、目頭が熱くなる
この人の前で
泣きたくなんか
ないのに。
優しい笑顔。
そっと抱き寄せられて
動けない。
「強がる彩香も好きだよ、
でも、本当は……、
昔のように甘えて欲しい、
どうしたら、また、俺の事を好きになる?」
頭をガァンと
叩かれたような気分。
この人には
分かっているの?
昔は確かに
憧れのお兄さんで
好きだったけど
今は……
好きじゃない。
それどころか
むしろ……
「……いいね、彩香のその目。
虫けらを見るような、俺を軽蔑したような目。
ゾクゾクするよ」