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委員長はエッチでした

第4章 逃げない





結城さんの胸ぐらを
掴む手を
投げるように
突き放す。




彩香のお母さんは
なおも結城さんに
近付いて
長い足を振り上げて
蹴りを放った。



「結城……っ、許さないわよ!
女の子によくもこんな、酷いこと……!」



感情的に任せて
長い足を振り上げる。



衝撃で結城さんの
体は揺れるけど

じっと
耐えるように
目を閉じている。



彩香の様子を見ていた黒崎が
ふと
立ち上がる
彩香を抱き上げ
大事なモノを
優しく
包むように

抱き上げた体に
上着をかけて
その細い肩に
腕を回している。




肩の上に
担ぐようにして
荷物のような
抱きかたなのに

何故だか
いつもオドオドしてる
黒崎が
逞しく見えて

堂々とした
大きな
男に見えた。



「……彩香さんを、一旦家で預かります」




きっぱりした言葉に
お母さんの動きが止まる。


そこで
はじめて
彩香さんを見たのか
息を飲むようにして
その綺麗な顔が
歪んだ。



ぽろぽろと流れる涙。



「彩香……なんであんたが、こんなめに……
あたしのせいなの……?」



口から血を流して
気を失った彩香。

意識はあるみたいだけど
黒崎がいつの間にか
服まで着せているのに
少し驚いた。



黒崎のハンカチなのか
口元の血を拭い
更にまた
新しく血が流れるのに
気付いて
ハッとした。



そうだ
彩香を
このままにしては
おけない。



俺はケータイを出して
父さんを呼び出した。



「父さん、彩香が大変なんだ、すぐに車で
迎えに来てくれ……!」




怪訝な顔をする
彩香のお母さんに
俺は頭を下げた。




「俺の父さんは医者なんで、任せて貰えたら、
大丈夫ですから、二ノ宮病院に、連れて行っても、大丈夫ですか?」




「……二ノ宮病院?」




このあたりでは有名な
大きな病院だ。



医師である父さんは
整形外科医だ。




ハッとして俺の顔を見つめる
彩香のお母さん




「……啓介くん、
あんたの名前は確か……あんまり、覚えてなくって……」




俺は覚悟を決めて
頷いた。




「はい、二ノ宮です、
旧姓は違いますけど、今、呼んだ父さんは、
彩香の……本当の父さんです」




俺の言葉に
その場が静まりかえった。

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