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第6章 冷温恋愛~通り雨の日~


 寒い冬。通り雨が降った。

 傘も差さずに君を待つ。来るはずもないのに。

 去年の今日、君と出会い君と付き合った。

 ずっといれるはずだった。あの人には言ってない。君と別れたこと。

 冷たい雨が降る。心に突き刺さる。

 温かい涙が頬を伝う。君は来ない。

「!!!」

 前から走ってきた人は、私の名を叫び傘を投げ出し、震える私に抱きついた。

「なん…で?」

「泣いてると思ったから」

 あの人ー…ずっとそばで見守ってくれてた人。

 私の背中をさすってくれる。

 そこで意識は途切れた。

 冷たい通り雨ー…その中に温もりを感じながら。

 目が覚めると見えた白い天井。白いベッド。

「良かった」

 微笑んでる人。

「ねえ……ありがとう」

「いえいえ。なあ……そろそろずっとそばにいて?」

 私の手を握りしめ言ってくれた。

「うん」

 これからはこの人を愛してこう。今度は笑えますように。


End

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