誰も見ないで
第4章 真実と真実
すると正樹は立ち上がって
「俺がいると気遣うだろうから帰るわ」
と言った
「あ……うん。ありがと」
「おじさんとおばさんには俺から連絡しとく。あと……あぁ、晩御飯は作って置いてあるから温めて食べろよ」
「はぁい」
あの短時間でいつ晩御飯まで作ったんだ
魔法使いか
流石おかあさん、と今回何度目ともわからない考えを巡らせながら返事をしていると正樹が近づいてきて
「?」
俺の目元に触った
「今はとりあえずその風邪治すことだけ考えろよ。……泣くほど悩んだりは後でにしなさい」
……あぁ
目、腫れてたんだ
昨日泣いちゃったから
「ありがと、正樹」
へら、と笑いながらそう言ったら正樹も少しだけ安心したような顔をしてくれた
持つべきものは友
いや、母
「じゃあ、鍵は昨日と同じようにしとくから」
「うん」
「明日朝起きてまだ無理そうだったらメールか電話しろよ。俺が先生に言っとく」
「んー」
こうして、台風のような勢いで俺を完璧に看病した正樹は帰って行った
何も考えず
治すことだけ
うん
そうだよね
今考えたって何かできるわけじゃないんだし
寝よう