誰も見ないで
第4章 真実と真実
恥ずかしそうにもじもじする女の子はすごく可愛くて
確か……去年の文化祭でやったミスコンの優勝者だったような
「好き……なんだもん……」
女の子がそう言うと、その子の周りにいた子たちがキャーーッと声を上げる
「絶対いけるよ!」
「渡辺君自分のモノにしちゃいな!」
そして友達に励まされて真っ赤な顔で頷いている
これを聞いたのが
僕が渡辺君に告白するきっかけ
馬鹿みたいだけど、誰かに取られちゃうってなったら急に焦っちゃったんだ
今まではただ見てるだけで安心してたくせにね
そして、屋上に呼び出した渡辺君にあの女の子みたいに「ダメでもともと」って思いながら告白した
それを受け入れてもらえた時の僕の気持ちは、比喩じゃなくて本当に天にも上る気持ち
嬉しくて嬉しくて
何より、その笑顔が向けられるのが僕だけになったのが嬉しくて
教室も屋上も全部思い出で
幸せだった
だから
階段の上から聞こえた小さな話し声に気づかなければ
今も幸せだったんだろうって思う
いつもよりちょっと遅い時間になってしまって、急いで階段を上がっていた時
人がいない筈の階段の上の方から聞こえた話し声