誰も見ないで
第4章 真実と真実
僕が答えると原君の笑顔が一層深くなる
「じゃあ、湊斗が土曜日に昼の11時ごろ駅前で待ってたのは間違ってなかったってことだよね」
こくん、と頷いて心の底から怯える
どんなに怒られるんだろうって思ったら足がすくんだ
怖い
けど、原君はそれを確認すると踵を返して
「ありがとう。それを確認したかっただけなんだ。教室戻らないと授業始まっちゃうね」
と言って歩き出した
「!?」
どうして怒らないの
少し歩いたところで振り返って「行かないの?」と聞いてくる原君の行動がわからない
なんで怒らないのかも
なんでもう怒った雰囲気すらない優しい原君に戻ってるのかも
「どうして、怒らないんですか……」
あんなに怖がってたくせに、僕の口からは怒られないことへの不満が出た
だって、渡辺君はちゃんと11時に待っててくれたのに行かなかった
考えれば考えるほど
僕は罰を受けるべきだ
すると原君の視線が床の方へ向いた
何かを思い返すみたいに
「あいつ……湊斗さ、土曜日9時過ぎから駅で待ってたらしいんだよね」
「!」
9時……って
うそ
「さっき言ったけど、湊斗はちゃんと11時ってわかってたんだよ。それなのに本当馬鹿だよね」