誰も見ないで
第4章 真実と真実
土曜日の朝、10時ごろに大和くんが見たのは本当に僕を待ってたんだ
しかもその時はもう1時間も待ってた……
「それで、せいぜい約束の時間を2時間も過ぎて連絡もないなら帰ればいいのに、夜まで待っててね」
そこでまた驚いた
だってあの日の夜は
「傘も持ってないから降ってきた雨で湊斗びちょびちょになって、それでもずっと待ってた」
「……」
「……朝から何も飲まず食わずで日中日差しで汗かいたところに雨で身体冷やして、高熱出したから今日は休みなんだ」
原君の声が少しずつ遠ざかっているような感覚になる
すると目の前にいた原君がため息をついた
「?」
「……ごめん、こんな言い方。紺野君にだってどうしても連絡出来なかった理由があるかもしれないのに」
そして出てきたのは僕を責める言葉じゃなくて謝罪の言葉だった
「……どうして謝るんですか。僕に、連絡出来なかった理由なんてありません」
ついそう口走ると、顔を上げた原君が笑う
「それでも、俺は紺野君を責めるような言い方するべきじゃなかった。ごめんね」
そしてまた僕に謝った原君は「だって」と続けた
「だって、湊斗は絶対紺野君を責めたりしないから。それなのに俺が怒るなんて、俺の方があいつに怒られちゃうよ」