誰も見ないで
第4章 真実と真実
『渡辺』と表札の出た家に着く頃には、僕はまともに喋れないくらい息を荒くしていた
そんな状態でも早く早くって思うのは変わらなくて、インターフォンを押す
少しすると
『はい』
となんだかすごく懐かしく感じる渡辺君の声が聞こえた
「はぁ、は……こ、んのです……」
なんとかそう伝えると
『えっ』
と聞こえた後ブツン、と通話が切れてしまった
そして家の中からバタバタとすごい音が聞こえてから扉が開く
「紺野君……!!!」
僕の名前を呼んでくれた渡辺君の顔が険しくて、怒られるって身構えた
けど、そんな考えは学校で思った通り全くの杞憂で
「良かったぁ」
渡辺君は安心したように破顔した
「連絡もなかったから、何かあったのかもとか……」
そう言いながら渡辺君は床にへろへろと座ってしまう
「大丈夫ですか!?」
「……ん……急に動いたから……」
手を貸そうと思って渡辺君に触れると、服の上からでも体温が高いことがわかる
すごい熱
ずっと雨に当たってたから……
「歩けますか?」
「うん……多分」
「僕の肩に寄りかかっていいので、頑張ってください」