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誰も見ないで

第4章 真実と真実


ズキン、と胸が痛む


やっぱり連絡もしないですっぽかしたり、するべきじゃなかった


あんまりなんの足しにもなってないんだろうってわかってるけど、それでもなんとか力になりたくて必死で渡辺君を部屋に入れた

どうにか布団に入れて、すごい汗をかいてることに気がついたから僕が


「すみません。タオルおかりします」


と言って立とうとしたその時

パシ、と腕を掴まれてしまう


「?」


あんまり家の中漁られるのとか好きじゃないのかな
でも緊急事態だし


すると、渡辺君は辛そうに細めていた目を少し開いて僕の方を見た


「……行かないで……」
「!」


風邪の時って、心細いよね


僕は安心させるように笑顔で「はい」と頷いて渡辺君の傍に座った


タオルは……
そうだ

ハンカチだけど、カバンの中に入ってる


学校を出るときに勢いよく掴んできたカバンを開けると、案の定ハンカチが見えた


ちょっとタオルと比べると心許ないけど
汗を拭ければ
なんでもいいよね


「渡辺君、汗拭かせて下さい」
「ん……ありがと……」


顔まわりの汗はやっぱり不快だったのか、拭いてあげると気持ち良さそうな顔をする

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