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誰も見ないで

第4章 真実と真実


「ずっとここにいますから、眠って下さい」


僕がそう言うと、何故か渡辺君は不服そうに眉を寄せる


「?」


そして暫く悩むような間があった後

掛け布団の端っこからにょき、と手が生えてきた


これは……


「……繋いでて」


そう言われた瞬間心臓が締め付けられる


か、かわいい


そのかわいさにやられて布団から生えた手に自分の手を乗せると、きゅ、と軽く握られた

そして渡辺君の目が苦しさじゃなくて嬉しさで細くなる


「えへへ……ありがとう」


熱のせいでいつもよりゆっくりめな喋り方も、ちょっとだけ舌ったらずな感じも驚くほどかわいくて


あぁやっぱり、僕は渡辺君のこと好きなんだ


って実感させられた

その後特に会話もなく渡辺君はゆっくりと眠った



けど、当然そこで渡辺君の目が覚めるまでじっとしてるなんてことは出来なくて


「……ごめんね」


と一応一声かけてから僕はゆっくりと手を離した


目が覚めたときに繋いでればいいよね?
……いつ目が覚めるかわからないけど……


僕は立ち上がって、キッチンに向かう

そこでまたごめんなさい、と声をかけて冷蔵庫を開いた

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