誰も見ないで
第1章 告白
ちょっと痛々しい手を思い出して
「けど、プリントの端っこで切ったって言ってた」
俺も自分の指先を確かめる
綺麗な手だったのに
すると、横から昨日と同じように大きな溜息が聞こえてきた
「ほんと、湊斗はダメだね……」
「え?」
「プリントで切ったなんて、嘘に決まってるでしょ。お弁当頑張って作ってくれたから、怪我してたんじゃない?」
「でも、本人が……」
俺の言いかけの言葉にも、途中で溜息を吐かれてしまう
正樹、そんなに溜息ばっかり吐いてるとおじいちゃんになっちゃうよ……
「じゃあ、湊斗が大好きな人にお弁当を作るとして」
「え……まずその前提がわかんなーー」
「黙って聞く」
「はい」
「美味しいって食べて貰いたいだけなのに、自分頑張りましたってわざわざアピールする?」
大好きな人にお弁当
美味しいって食べて貰いたい
けど、頑張ったってことを知られたくない?
「……よくわかんない」
やっぱり、大好きな人にっていうのが
あんまりピンとこない
「んー……じゃあ俺に作るとしたら?」
「アピールするし、何か買ってもらう」
「即答……うーん……なら、今度その子に湊斗がお弁当作ってみたら?」