誰も見ないで
第5章 好きになんて(サイドストーリー)
「!!」
するり、と背中を撫でられたことにも驚いた
おいおい
俺女の子じゃないんだけど!?
わかってるよね?
ゾクっとしてしまった背筋が恨めしい
しかし相原大和の行動は止まらず、まだ少し姿勢の崩れたままだった俺の腰をぐいっと自分の方に引き寄せてちゃんと立たされる
っだから
やめろってば!
なんだか気恥ずかしくて、俺はお礼も言えずにただ俯いた
「ほら、帰るぞ」
すると、そんなことなんて何も気にしていない様子の相原大和が平然と俺から離れてそう言った
「いえ、ここからは1人で帰れます。熱も大したことないので」
「そんなことねぇだろ」
相原大和がまた俺の額にする、と手を当てて熱を確かめられる
「……っ」
それを振り払うように避けて
「それにそもそも、先輩にこんなことして貰う理由がありません」
俺がそう言うと、相原大和は「あー……」と考え込む
「理由ならある」
「? なんですか?」
「瑞稀が世話になった」
「別に、世話になったって言われるほどのことはしてません」
すると今度は頭の後ろをがしがし掻いた相原大和が意地の悪そうな笑みを浮かべた
「あー……まぁ、理由なんてもんはいいんだよ。また担いで運ばれたくなかったら大人しく家まで案内しろ」