誰も見ないで
第6章 キスの次は
俺の言葉に紺野くんが驚いた顔をして、その後警戒するような表情に変わる
別にそんな変なお願いじゃないんだけど
「なんでしょう……?」
「俺のこと、湊斗って呼んで欲しいな」
「!」
そしてまた驚いた顔に戻った紺野くんがちょっとだけ面白い
「そしたらいくらでもうちにいていいよ」
「名前……で……」
「そう。呼んで」
いつまでも渡辺君、なんてちょっとよそよそしいもんね
それも一緒に紺野君に伝えると、紺野は
「僕だって、紺野君って呼ばれてるじゃないですか……」
と拗ねたように言う
え、そんな
呼んでいいなら遠慮なく呼ぶよ
「瑞稀?」
「……っ」
俺が紺野君の名前を呼ぶと、紺野君の顔が一気に赤く染まった
かわいい
そんな風に反応してくれるなら先に呼んでみたらよかった
「ほら、俺のことも呼んで? 瑞稀」
「ま……っ、待って下さい……あ、の……君付けたらダメ……ですか……」
「いいけど、それなら俺も瑞稀君って呼ぶよ」
ちょっと意地悪のつもりで紺野君にそう言ったんだけど、紺野君に「むしろそっちの方がいいです」と言われてしまった
「急に呼び捨てなんて、ドキドキして心臓が壊れちゃいそうで……」