誰も見ないで
第1章 告白
「ただいまー」
家に帰り声をかけるけど、それに答える声はない
誰もいないって言うより、そもそもこの家には俺以外住んでないから
俺の両親は海外転勤が多くて、365日のうち360日ぐらいは海外にいる
そんな彼らに着いて行くって選択肢もあったんだけど、何度も学校を変えると友達が出来にくくなってしまうという理由で俺は日本に一人暮らしすることになった
もともと放任主義っぽい人たちだしね
だからお昼ご飯は手作りのお弁当じゃなくてコンビニ弁当だったんだけど
「……よし」
今日は久しぶりにキッチンに立って、明日のお弁当のリハーサルしなくちゃ
「頑張るぞ!」
……と意気込んだはいいものの
「痛っ……あ、噴きこぼれる……!! うわぁ、熱いっ……」
学校の調理実習ぐらいしかやってこなかった俺の料理技術なんてたかが知れていて
尚且つ携帯で調べた作り方を見ながらやってたら変に気を取られてミスを連発してしまった
「うー……痛い……」
何度目かわからない絆創膏を指に巻いていると、携帯がメールの着信を知らせる
送信主は正樹で
『上手く作れた? 俺も作ってもらおうかな』
という内容だった