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誰も見ないで

第1章 告白


『全然ダメ。指傷だらけになっちゃった。正樹に食べさせる分まで作ってたら来年になる』


メールに返信をして、さっき焦がしてしまった野菜炒めの残りが焦げ付いたフライパンを洗っていると


『冗談だよ。頑張れ』


と応援してくれた

そして浮かぶのはかわいく笑う紺野君と、その指に巻かれた痛々しい絆創膏の数々


正樹は紺野君が俺に嘘ついてたって言ってたけど、ほんとにこれだけ苦労してたら言っちゃうよ

これだけ頑張ったんだよって


食器用洗剤が沁みて痛むのを耐えながら、俺は洗い終わったばかりのフライパンをまたコンロの上に置いた


でもそれにはまずちゃんと作らないことには意味がないよね

作ったお弁当もないのに絆創膏だけ見せて頑張ったよ、は意味がわかんないもん


「まだ8時だし、たっぷり練習する時間あるぞ」


頑張れ俺、とまた自分を応援して俺は大分少なくなった食材を取り出した



次の日


「ふぁ……ぁ……」


大きな欠伸が出てしまったのは、誰もいない学校の廊下

何で誰もいないのかって、俺が早く来すぎたから


お弁当作るのにすごい早起きして、時間が余った分早くに登校したんだ

あのまま家にいたら寝ちゃいそうだったし

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