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誰も見ないで

第7章 罪と罰と罪と

瑞稀目線


あんなに幸せだって思うことは後にも先にももうないかもしれない、なんて思うほど湊斗君と過ごした一晩は幸せだった

けど、やっぱり人の幸せなんてものは儚くて長くは続かない



一瞬、声が出てしまうかと思った


消したはずの僕の家の電気が、点いていたから

普通なら消し忘れだろうって考えると思うけど、僕の場合は違う



帰って来たんだ



早く見つけられて良かった

湊斗君からは僕の家が見えない位置で止められたから


必死で頭を動かして、無理のなさそうな理由を探す

そして僕は出来る限り精一杯の普通を装って、湊斗君に嘘を吐いた


「今日消防の点検があるんです」


「僕1人暮らしなので……」


湊斗君は素直なのか僕のことを信じてくれてるからなのか、なんの抵抗もなく僕の嘘を受け入れてくれた


けど、心の中ではどこかで

湊斗君に気づいてって叫んでた気がする


嘘なんだよ
気づいて

離れるの、嫌だよ


それでも人の心の声なんて他人に聞こえるわけもなく

湊斗君は一瞬だけ僕の手を握ると、「学校で待ってるね」と言いながら去って行ってしまった


これでいいんだ
僕の問題に、人は巻き込まない

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