誰も見ないで
第7章 罪と罰と罪と
ATMから下ろせる限界の金額まで数回に分けて下ろして
これで暫くお父さんと会うこともないよね、って願いながら家に帰った
「…………はい」
ATMの横に置いてあったお金を入れるようの小さな封筒をそのまま差し出すと、攫うように奪われる
そしてすぐさま中身を確認して
大きく舌打ちされた
「チッ……これっぽっちかよ……」
何が不満だって言うんだ
そのお金はお父さんのじゃないのに
お母さんが……っ
抑えきれないほどイライラして
頭の中が黒いぐるぐるしたものに囚われる
「なんだ? その不満そうな顔はよぉ」
「……」
不満に決まってる
でもその不満を言えないでいると、僕のお腹のあたりを椅子に座っていたお父さんに蹴られた
また盛大に転んだ僕の頭の上から笑い声が降ってくる
「反発も出来ねぇのかよ。つまんねぇな」
醜い笑い方するな
家中お酒とタバコ臭いんだよ
思ってはいるのに言えないのは、暴力の恐怖があるから
反発的な態度さえ取らなければ死ぬほどのことはされない
けど反発したら、お父さんは何するかわからない
「……」
「お前がんな顔じゃなければ、酒も買って来させたのによぉ」