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誰も見ないで

第7章 罪と罰と罪と


少し言うのを躊躇っているようにも見えた湊斗君だけど、ちゃんと理由を教えてくれる


「瑞稀君が笑ってるなぁって」


でもその答えはよくわからないものだった


「? 僕、いつもそんなに笑ったりしてませんか?」
「ううん。違くて」


湊斗君は笑顔のまま、僕に「どっちがいい?」と聞いてから指をさした方のパンの封を切ってくれる

そしてそれを僕に手渡しながら


「なんだか学校に来てから元気ないみたいだったから。何で笑って貰えたのかわからないけど、笑顔が見れてよかったなぁって」


ね、と少し照れ臭そうに首を傾げる湊斗君


「……」


その姿を見ても、なんにも感じない


と最初は思ったんだけど

目の前にあった湊斗君の顔が突然驚いたようになって


「わっ、わっ……なんで? 俺なんかまずいこと言ったかな? ごめんね泣かないで……っ」


と言いながらポケットからハンカチを出してくれるのを見て、我に返った


泣いてる
僕、泣いてる……?


頬に触れたら
触れた指の感覚はないのに、何でかあったかい涙の感触だけはあって

自分でもあれ? と驚いて

その後
突然津波のように感情が押し寄せて来た

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