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誰も見ないで

第7章 罪と罰と罪と


なんだろう、と思って目を凝らすと、陶器製で蓋つきの小さな容器が見える

蓋には小さな穴がいくつも空いていて
その見た目は


香炉……?


お香を焚く専用の器のようだった

お父さんはその中にカバンの中から取り出した円錐状の塊に火をつけて入れる


本当に香炉だったんだ


白い煙が筋のように香炉から一直線に天井へと伸びる

お父さんと男の人が部屋の窓や扉を閉め切ると、やがてふんわりとお香の香りが部屋全体に回る


「なんか、匂い薄くない?」
「追加するか」


けど、小さな一粒じゃ不満だったらしい男の人がそう言ってお父さんがお香を追加すると、煙で部屋が薄く白むほどになった


すごい香り


もちろん比例して香りも強くなる

甘いような
けど、どこかでスパイスのような刺激のある匂いが僕の肺に満ちて息がしづらい


なんか、頭ぼーっとする
あんまり強すぎる香りってよくないな


鼻でしか呼吸のできない僕にはお香を避ける手立てが無くて、ただお父さんたちの動向を見守った


「ん、あー……効いてきた、かも」


男の人がベッドに座って深呼吸をしながら伸びをしている

その顔が、少しだけ赤らんでいた

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