誰も見ないで
第7章 罪と罰と罪と
見覚えがあるっていうか、さっき見たばっかり
瑞稀君に似てるおじさんだ
フラフラしながら俺と同じ方向に歩くおじさんを意図せず尾行するかたちになってしまった
んーなんか、追いついても勝手に気まずいからゆっくり歩こう
少し縮まってしまった距離を調整して、いつか違う方向に行くだろって思って別のことを考えながら歩く
けど、もうすぐ俺の家ってぐらい近くに行ってもおじさんと歩く方向が変わらない
あれ
近所の人だっけ?
全然知らないなぁ
そして、遠くでおじさんが曲がり角を曲がった
そっち行ったらもう俺の家だ
そんな近くに住んでたの?
驚きながら俺も同じ曲がり角にさしかかると
あ、おじさ、ん……?
おじさんは、反対方向から来た人と何かを渡し合っている
そしてそれが終わると、2人ともそそくさと歩いてバラバラにいなくなってしまった
「?」
結局この辺に住んでる人じゃなかったってこと?
なんだ
けどそれから、その瑞稀君似のおじさんを何度か家の近くの住宅街で見るようになった
いつも住宅街で
少しずつ微妙に違う場所で
同じ男の人と何かを渡し合って去って行く