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誰も見ないで

第1章 告白


「指、たくさん怪我してますね。どうかしたんですか?」
「!!」


紺野君はそう言うと俺の絆創膏が巻かれた指に触れようとしてくる


あっ……
だ、だめ!!!


俺はそれをスル、と避けて


「ちょ、ちょっと……転んだ時に手ついちゃって……?」


と咄嗟に訳のわからない言い訳をした


あ、あれ?

朝と同じで、本当のこと言えない
なんで

お弁当頑張って作ったからって


でも、頑張って不味かったら救いようがないから
えっと


俺の頭がぐるぐる回っているうちに紺野君は俺がいつしかそうしたように触れるのを諦めて


「そうですか。痛そうですね」


と気遣うような目を向けてくれた

その時完全に正樹の言ってた通りになったことを思い出してちょっと悔しいって思ったんだけど、今の俺にはもっと大きなイベントがまだ残っている


「全然痛くないよ。それより、はいお箸」


怪我の話題を避けて紺野君がいつもそうしてくれるように俺も箸を差し出した

するとお礼を言いながらそれを受け取った紺野君が嬉しそうに何から食べるか考え始める


「どれもすごく美味しそうです」
「……美味しいといいんだけど」


ちょっとだけ漏れた本音を紺野君が笑った

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