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誰も見ないで

第1章 告白


「渡辺君が作ったものなら全部美味しいですよ、絶対」
「……っ」


満面の笑みで言われた言葉が本当に素直な気持ちだってわかったから、照れ臭くて顔を晒す


もー……
自分のかわいさわかってなさすぎるよ


前髪の隙間や、眼鏡の反射しない瞬間
少しでも紺野君の素顔を
あのかわいい笑顔を見られる瞬間を自分が探してるることは、なんとなくわかってる


ほんと、恥ずかしい


俺が顔の熱が冷めるのを待っているのを知らない紺野君は、最初に何を食べるのか決まったみたいで


「じゃあこれ。卵焼きいただきます」


黄色いだし巻き卵を箸で1つ摘み上げた

紺野君が作ったよりも茶色い部分の見えるそれが、小さな口に吸い込まれていく

俺はまだ顔を上げられない状態なのに、紺野君の反応が気になってチラチラと様子を伺った


あ…………
そっか

あの時の紺野君も、こんな気持ちだったのかな


俺がお弁当を食べるとき、ビクビク怯えたようにしてたあれ


そっか

俺だって紺野君が不味いなんて言わないのわかってるけど、どんな反応が返ってくるか不安でしょうがないもん


あの時不思議に思った紺野君の気持ちが理解できて嬉しい

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