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誰も見ないで

第9章 何度でも好きになる


うん、と頷いた瑞稀君と言葉通り何をするでもなくだらだら時間を過ごす

けど


そういえば、瑞稀君記憶戻ったんだよなぁ


と思い出せばそればかりが気になってしまう


明日になって父さんと母さんに記憶が戻ったことを話せばきっと聞くことになると思う

でも俺はなんとなく、父さんや母さんと同時に知りたくなくて

少しでも早く
瑞稀君のこと知りたくて


「……ねぇ瑞稀君」


瑞稀君に声をかけていた


「なに?」


少し気怠げで、眠そうな感じの瑞稀君が応える


「記憶、さ……全部戻ったの?」


俺の質問に、一瞬言葉の意味を理解するような間が空いて


「……うん」


瑞稀君が小さく頷いた


「記憶が……意識が? なくなる直前とかのことは曖昧だけど、それ以外は多分ちゃんと、思い出したよ」
「それなら、さ…………ぁ」


その時のこと聞かせて

なんて俺が聞いていいのかな
やっぱりやめようかな


そこまで口に出しておいて、躊躇って口を噤んでしまう

すると、瑞稀君が


「聞いてくれる?」


と控えめに言った


「いい、の……?」


俺の言葉に瑞稀君が頷く


「誰より先に、ちゃんと湊斗君に説明しなきゃって思ってたから」

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