誰も見ないで
第10章 同棲
「休日のデート……出来なかったの、僕のせい、だよね……」
そして言い出したのはこんなことで
そんなこともあったな、と言われてから思い出した
しゅん、と俯いてしまった瑞稀君を作業の手を止めて引き寄せる
小さな身体が俺の腕の中にすっぽりと収まった
「何言ってるの。あれは俺が悪かったんだから、そんな暗い顔しないで? それに、出来なかったからこそちゃんとデートしよ」
ね、と笑いかけると顔を赤くした瑞稀君が俺の胸に顔を埋めて表情を隠す
耳が真っ赤だから隠しても赤いのはバレバレだよ、なんて言ったら両手で耳も隠したりするんだろうか
そんなアホなことを考えていると、瑞稀君が小さな声で
「……デート、行きたいです」
って呟いて
「やった!」
俺は瑞稀君のことをぎゅーって強く抱き締めながらガッツポーズをした
「じゃあ早く荷ほどき終わらせてどこ行くかとか考えよ」
言ってからふと気づく
「瑞稀君抱き締めたまんまじゃ荷ほどき出来ない……」
そんな俺の言葉に瑞稀君が腕の中でもぞもぞ動いて離れようとするけど、俺はそれを全力で阻止した
「離れちゃだめ」
「でも荷ほどき……」