誰も見ないで
第10章 同棲
俺にその知識があったら念仏でも唱えながら悟りが開けそうな感じで只管耐えて
漸く次の駅
新しい駅ビルに行くならこの駅だから、案の定人がどっと降りた
さっきまでぎゅうぎゅうだったのに、席が空くぐらい
俺たちは空いてた席に並んで腰掛ける
そしてホッと一息つきながら
「すごい満員だったね」
なんて話題を振ると「そうだね」って返事の後に
「でも、もう少し満員電車乗ってても良かったのになぁ」
なんて言われた
「そしたらもう少しくっついていられたのに」
瑞稀君はそんなことを言いながら見た目にはわからない程度に俺に体重をかけてよりかかる
「……っ」
かわいすぎてつらい
「……俺は、満員電車続いたら困るよ……電車から降りられなくなっちゃう……」
あーもう
顔が熱い
こんな時間に変なこと言いたくないのに
俺の言葉に一瞬ショックを受けた様子の瑞稀君は、俺の真っ赤な顔を見て悟ったらしく
「……ふふふ」
隣で小さく笑い出した
「笑わないでよ、もう」
「ふふふ、ごめんなさい」
謝りながらも顔はにこにこ笑ってて、つられて俺も笑ってしまった