誰も見ないで
第10章 同棲
暫く電車に揺られて
乗り換えてまた乗って
やっぱりちょっと遠かったけど、漸く目的地に着いた
駅から直通の歩道橋を通ってショッピングモールに入ると、瑞稀君がきょろきょろ見回しながら
「初めて来たなぁ」
と呟いた
「まぁ、遠いもんね」
「湊斗君はよく来るの?」
「よくは来ないよ。好きなブランドがこっちに移転してから来るようになっただけだから」
近くはないけど電車ですぐに行けてしまう距離に大きな駅ビルが建ったせいで、少し空いてる店内を歩く
「先にご飯? 買い物?」
俺が聞くと、瑞稀君が少し考えて「買い物」と言ったので瑞稀君が褒めてくれた俺の好きな洋服屋さんに直行した
「…………オシャレ……」
着いて早々瑞稀君が発したのはこんな言葉で、つい笑ってしまう
「でも別にどれも高くないんだよ?」
1つ適当な商品を取って値札を見せると
「ほんとだ」
って驚いた後
「こういうお店を見つけられるのがすごい」
と変な方向に褒められた
それから2人で店内をゆっくり見て回る
「これとかどう?」
「……僕に似合うかな?」
「似合うと思うけどなぁ」