誰も見ないで
第10章 同棲
落ち着いた色合いの服を俺が選んで当てると、瑞稀君は少し不安そう
「何着か持って試着して来たら?」
俺の提案に瑞稀君はちょっと渋ってから頷いた
どうしたんだろ?
お店に来てみたらそんなに好きな感じじゃなかったとか?
それならそれで別のお店もいっぱいあるからいいのに
そう思いながらもいくつか選んで試着室がいくつか並ぶところの1つに瑞稀君が入っていくのを見送る
少し待つとカーテンの横からひょこっ、と瑞稀君が顔を覗かせた
「? 着替え終わった?」
「……」
俺が聞くと瑞稀君は顔の下半分を隠してもじもじしてる
「サイズ合わなくて着れなかった? 違うサイズの持ってこようか?」
どうしたらいいのかわからなくて色々質問してみるけど、瑞稀君は一向に答えなくて
どうしたんだろ、と不安になりかけたその時瑞稀君がカーテンで口元を隠しながらも
「湊斗君の横に並んで歩いても変じゃないか……見て、欲しい……です」
と小さな声で言ったのが聞こえた
俺の横に、って
「……っ」
急に恥ずかしくなって、俺はその場にしゃがみ込んだ
「み、湊斗君?」
上から瑞稀君の動揺した声が降って来る