誰も見ないで
第10章 同棲
でもちょっと待って
顔見せられないぐらい情けない顔してるから
にやけちゃって無理
俺は手の甲で口元を隠しながら
「……そんなかわいいこと言わないで……でもね、俺と一緒にいるのにどんな格好だって、人に何か言われる筋合いはないよ。俺が瑞稀君といたいから、どんなでもいい……」
とちゃんと伝えた
すると瑞稀君も顔を赤くして「そ、っか……」と頷く
俺たち2人で照れあって、ほんと恥ずかしい
店員さんが他のお客さんの対応に行ってて良かった
ふーー、と息をついて一旦気持ちを落ち着かせてから俺は立ち上がった
そして俺を上目遣いで見上げる瑞稀君の顔下半分を隠しているカーテンをそっと開く
見えたのは俺が最初に選んだ服を着てくれてる瑞稀君で、今度はにやけたんじゃなく自然と笑顔になった
「うん。すごく似合ってる」
瑞稀君がお礼を言ってくれたところで店員さんがやってきて、「いかがですか〜?」と聞かれた
すると瑞稀君が「これ着ていけますか?」って聞いててびっくり
「大丈夫ですよ」って答えてくれた店員さんがタグを切るためのハサミを取りに行ってる間に
「そんなに気に入ったの?」
って瑞稀君につい聞いた