誰も見ないで
第10章 同棲
俺が触れたことでもっと顔を赤くした瑞稀君にどうしようもなく嬉しくなる
けど、そんな俺の気持ちとは裏腹にあえてキツめの声で
「それ浮気だから」
と言ってみた
すると瑞稀君は両手で顔を隠して「そんな……」と俯いた
泣いちゃった? と少し焦ったんだけど、さっきよりもずっと赤くなってる耳を見て照れてるんだって察した
俺は柔らかい頬を名残惜しく思いながらも手を離して頭をまた撫でる
本当はもう全身に触りたいし
抱き締めたい
顔とか首とか胸とか背中とか
でも今は外で、そんなこと出来ないから我慢して頭を撫でる
この我慢も一緒に瑞稀君に伝わったらいいのに
すると、瑞稀君がぼそっと何かを呟いた
「ごめん、もう1回言って?」
俺が少し屈んでもう1度聞くと、瑞稀君は
「それなら湊斗君だって、ずっと浮気だ」
と言った
顔を隠されてた手が退かされて見えた目は、言葉と違って全然俺を責めてはなかったけど
「どうして?」
瑞稀君の小さな手が俺の服の裾を掴んでちょん、と引っ張る
「だってさっきから、たくさんの女の人から見られてる」
責めてるニュアンスはなかったけど、拗ねた感じで言われて息が詰まった