誰も見ないで
第11章 侵略者
俺が最近1番大切にしていたシャーペンがなくなっている
そんな一生徒の焦りに気がつくはずのない先生が普通に授業を始めてしまった
けど、俺は全然聞く気になれなくて
先生に何も言われない範囲で筆箱を見たり机の下を見たり、鞄を中を確認したりした
午前中は使ってた
というか、直前の4時間目までは使ってたんだから家に置いてきたとかはありえない
なくした?
そんな
結局俺はその時間の授業はほとんど聞くことが出来ず、頭の中で午前中の自分の行動を思い返していた
「それじゃあ今日はここまで。日直、号令」
「気をつけー、礼」
「「ありがとうございました」」
授業が終わって、俺は今まで話しかけたこともない隣の人に話しかけた
「あの……」
「!!!」
心底びっくりしたような女の子は帰り支度の手を止めて俺の方を見た
「…………私、ですか?」
「? はい」
何で敬語
「俺のシャーペンがなくなっちゃったんだけど、この辺で落ちてるの見なかった?」
俺が聞くと、その子は「えっ」とか「あ」とか意味のない言葉を発した後に
「あ、赤い、やつ?」
と聞いてきた
「そう! 赤いやつ」
伝わった!
よかった