
誰も見ないで
第11章 侵略者
なくしちゃったこと、言ったら瑞稀君怒るかな
そう思って一瞬言うのを躊躇った
けど、もし俺が逆の立場だったらって考えて
俺なら、何も言われずに突然瑞稀君がシャーペン使わなくなった方が不安になる
と思って
「ごめん瑞稀君。お昼前まで使ってて、ちゃんと筆箱に戻したはずなんだけど……6時間目に使おうとしたらお揃いのシャーペン、なくなってて……」
正直に打ち明けた
ごめんなさい、と素直に頭を下げる
「……」
でも、瑞稀君からは暫く反応が返ってこなくて
不安になった俺はなんとか言わなきゃって焦る
「あ、あの……あのね、だから先生にも言って、落し物にあったら教えてくれる、って……」
言えば言うほど情けなくて
この空気が辛い
そう思っていたら瑞稀君はただ考え込んでただけみたいで
「あっ……ごめん。怒ってるとか、そういうんじゃないよ」
手を横に振りながらそう言ってくれた
よかった
怒ってないって
でも、悪いのは完全に俺
「ほんとにごめん。ちゃんと探すね……」
「……そんなに落ち込まないで」
誰もいなくなった教室で慰められるように言われて、少しだけ涙が出そうだった
