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誰も見ないで

第11章 侵略者


だから

あの時の瑞稀君の苦しそうな顔だって
少しも忘れてない


「瑞稀君……?」


本当のことを聞きたくて呼んだ名前は、女の子も正樹も肩を揺らすほど冷たく響く


「……」


まだ何も言わない瑞稀君を見て、女の子は畳み掛ける


「紺野が! 別に少しくらいならいいって言ったのよ!!! 自分だったら疑われないからって、シャーペンもキーホルダーもタオルも!!こいつが盗ってきたんだから!!!」


女の子の言葉に瑞稀君はパッと顔を上げた


「ち、違……!!! 僕は、最初の……だ、け……」


でも、発した言葉は尻すぼみに小さくなってしまう


「嘘つかないで!!! 全部アンタが悪いんじゃない!!!!」


また叫んだ女の子を正樹が止める


「ちょっと静かにしてて」


いつもはにこにこ笑ってる正樹も、今ばっかりは顔から表情が抜けていて

女の子は「あっ……」と小さな声をあげてから黙った

正樹が俺に視線を向ける


こんな状態で
何を言えっていうんだ


「…………」


痛いほどの沈黙が流れて
俺の口から出たのは


「……瑞稀君、あの時この子と……何、話してたの……?」


あまりに悲しみに満ちた声

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