誰も見ないで
第12章 侵入者
俺の服に埋もれて顔の下半分は見えなくて
大きな目だけが俺を見上げてくる
「……」
「…………どうしたの、急にこんな風に甘えてきて」
無言で見つめてくる瑞稀君にそう聞くと、今度は顔を横に向けて俺の胸に耳を当てるようにした
それだけで心臓が早くなりそうだ
「自分が悪いことをしてしまったって、わかってる。正樹君が言った信用をなくしてしまったってことも、わかる」
瑞稀君がまるで自分でも気づかなかった心の内を読み上げるみたいに無感情に話す
「もしかしたら湊斗君からの信用もなくしてしまったんじゃないかって、怖かった」
怖いって単語に胸に小さな針が刺さったように痛む
「けど、そんな恐怖よりもずっと、湊斗君に触れられないことが辛かった……です」
瑞稀君が俺の背中に回した腕に、少しだけ力が入った
また顔の角度が変わって、胸に顔を埋められる
そこで深く息を吸って、吐いて
それでも肺に残った少しの空気で瑞稀君は小さく
「ごめんなさい」
と呟いた
「……うん」
「人にとられたくない、嫌われたくない、離れたくない……」
子供のわがままみたいな、そんな言葉にもドキドキする