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誰も見ないで

第13章 好きになんて(サイドストーリー2)


そして全部のボタンを留めると、腕をぐいっと引き寄せられて


「!」


俺は相原大和の腕の中に入れられた

硬い胸板に顔を埋められて後頭部を優しく叩かれる

まるで泣く子をあやすみたいに


「ちょっ……と!? 何するんですか!?」


何この状況!?
俺の胸で泣けってこと!?


ドラマか少女漫画か、みたいな状況に焦りつつも、俺は男だぞっていう考えが優って抵抗する

けど元々の力の差で俺の抵抗なんてあってないようなものの相原大和は、構わず俺の頭を撫でてきた


「……やめ、て、ください」


だんだん尻すぼみになって落ち着くと


やばい


鼻が熱くなって
視界が歪んだ


くそ
本当に泣くのか、俺


そんなことを考えて必死で涙を堪えていると、俺の耳元に相原大和が顔を寄せてきた


やめて
今優しい言葉とか
かけられたら


泣く、と思うのと同時に相原大和は俺の耳に言葉を吹き込んだ

けどそれは砂糖のように甘く俺を慰めるための言葉ではなく


「殺してやる」


地の底から這い上がったような低い声で紡がれる
人に対する悪意そのものだった


「!?」


予想外の事態に俺の頭は一瞬にしてフリーズ

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