誰も見ないで
第13章 好きになんて(サイドストーリー2)
ガチ、と音がしそうなほどに急に身体を硬くした俺に気づいているのかいないのか、相原大和はまた俺の耳元で
「殺してやる」
と紡いだ
出そうだった涙も引っ込む事態に混乱していると、その次に出た言葉に驚いた
「あの野郎、絶対に許さねぇ」
あの野郎……?
ってことは、俺じゃなかったのか
この状況で俺のことを殺すとか言うのも意味がわからないんだけど、あまりに急に耳元で言われたものだからちょっと勘違いしてしまった
けど
「なんで先輩が怒るんですか……」
悪意の矛先が俺じゃなかったことにホッとしたけど、逆に浮かんできた疑問を口にする
というか、うわぁ
俺の声自分で引くほど情けないな
話しかけたからか抱きしめたまま俺の方へ少し顔を向けた相原大和のせいで、耳に柔らかいものが当たった感覚がした
肌が触れ合うことで急に落ち着かなくなる
「なんでってそりゃ……」
低めの声で囁かれるとひく、と自分の肩が揺れて
ばか……!!
俺のばか……!!!
理由を聞く余裕なんてないぐらい焦る
しかもより最悪なのは俺の肩が揺れたのが相原大和にもバレたってこと
「……」
「……」