誰も見ないで
第14章 文化祭
「?」
なんだろう
「何話したかとか、聞いてもいい?」
「うん……? えっと、大半は木下さんの友達への愚痴を聞いてるだけだったよ。あとは、好みの女の子のタイプとか聞かれたかな」
あ、なんか瑞稀君が反応した
ぴく、と肩を揺らした瑞稀君が、何か言いたそうで言わない
「どうかしたの?」
俺が身体を起こして目線を合わせながら聞くと、瑞稀君は余計に言いにくそうにする
けど、じっと待っているとその態度も崩れてきて
「……」
何か小さな声で言った
「ん?」
俺が口元に耳を寄せると、今度はちゃんと聞き取れる大きさで
「不安………です」
と言われた
不安?
俺が木下さんといるのが?
「湊斗君と僕の始まりに、すごく似てて、怖い……」
似てる
かな
突然告白されて
本屋に一緒に行って、とか?
「それに僕、湊斗君の好きな女の子とか、聞いたこと…………ない……」
あと少しで泣き出してしまいそうな
そんな顔で俯く瑞稀君を俺は屋上でしたのと同じように膝の上に乗せてぎゅっと抱き締めた
「ごめんね。不安にさせて」
「……」
「出来るだけ早く元の生活に戻れるようにするから」