誰も見ないで
第14章 文化祭
瑞稀君からキスしてくれた……
嬉しさのあまりじっと見つめると、恥ずかしかったのか瑞稀君がまた俺の頭をぎゅっと抱き締めてきた
胸がほわっとあったかくなる感じ
脳が甘く痺れて、瑞稀君のことしか考えられなくなる
この幸せを維持するためにも
頑張らなきゃ
と、決意はしたんだけど
学校に行けば
「渡辺君!」
「渡辺くーん!」
「ねぇ渡辺君」
これまでの学校生活で人に呼ばれた回数を全部合わせても、この数日で木下さんに呼ばれた回数の方が多いんじゃないかってぐらい沢山呼ばれる
呼ばれるってことは返事をしなきゃいけないし
返事をするってことは、告白を聞いていた周りのクラスメイトから変な目で見られないといけない
「……むり」
そんなことに当然慣れていない俺の逃げ場はもう男子トイレしかなくて
「はぁ……」
溜息を吐きながら1人個室で項垂れているのがここ最近の日課になりつつある
イジメにあってる人がトイレでお弁当食べるってドラマとかで見るけど、ちょっと気持ちがわかる
狭い空間で
誰にも見られなくて
落ち着く
でもあぁ……始業のチャイムが鳴った……
戻らなきゃ