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誰も見ないで

第14章 文化祭


その声に応えようとした
次の瞬間


「渡辺くーん!」
「!!」


廊下に響く木下さんの声


「こんなところで何してるの? お手洗いに行くって言ってなかった?」
「あ、と……」


俺の傍まで駆け寄ってきてにこにこ笑う木下さんの顔は、なんか

いつもと違う


じわ、と身体全体に滲む冷や汗は、俺が本心では木下さんの表情が違う理由に気づいてるからだ


小川さんのこと、勘違いしてるんだ


「小川さんも一緒? どうして?」


軽く首を傾げる姿に、小川さんは少し赤い顔をして


「……っ」


走り去ってしまった


瑞稀君のことを木下さんに言うのは恥ずかしくて顔が赤かったんだろうけど

まずい

これじゃ


「……小川さんに告白されたの?」
「!」


俺が今まさに思っていたことを的確に突くように言われて、背筋がぞっとした


「違うよ。そんなんじゃない」
「でも、渡辺君のこと好きだよ、絶対」


にっこり笑ってはいるのに
笑ってない


小川さんが俺のことを好きってそれだけでも否定したかったんだけど、木下さんは俺に弁解させる気はないみたいに腕を引いてきた


「教室戻ろう? もう授業始まっちゃうよ」

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