誰も見ないで
第14章 文化祭
その後から続く授業は気が気じゃなくて
普通なら休み時間に木下さんが俺の席まで来て話しかけてこないのとか、嬉しいはずなのに
怖い
ってそれしか考えられなかった
「ただいま……」
「おかえりなさい! 今日は早いね」
そんな憂鬱な気分のまま家に帰ると、瑞稀君はいつもと変わらない笑顔で話してくれる
言うべきなのかな
小川さんが危ないかもって
瑞稀君に
じっと見つめる俺を、瑞稀君の大きな目が見返してくる
「? どうかしたの?」
「…………」
迷って
結局俺は
「ううん、なんでもない」
と答えてしまった
だって万が一
瑞稀君に呆れたような顔されたら
とか考えちゃって
でもそれって
最低な自己保身だ
「……毎日あんな風にくっついて動かれたら疲れちゃうよね。もうお風呂沸かそっか」
俺の態度を疲労だととったらしい瑞稀君は、そそくさ俺の傍を離れて浴室へと向かう
その背中を見送りながら俺は、これまで感じたことがないような罪悪感に襲われて
吐きそう
もう心の中はいっぱいいっぱいだった
小川さんへの嫉妬と
瑞稀君への罪悪感と
木下さんへの恐怖と
全部に
何にも出来ないままだ