誰も見ないで
第14章 文化祭
次の日学校へ行くと特に何ともなさそうに普通に小川さんは登校していて、俺はほっと息をついた
何にもなかったのかな
むしろあれぐらいで何か起きるかも、なんて考えすぎだったんだ
きっと
良かった、と自分の罪悪感が薄れていくのを感じていた
その日の授業中
「きゃっ……!?」
声をあげたのは小川さん
俺は全身から汗が噴き出すような感覚と共に小川さんの方へ目を向けた
「なんだ? どうした?」
教科担当の先生が小川さんの方へと近づく
「すみません……筆箱の中に、これが……」
小川さんが取り出したのは、虫の形をしたプラスチック製のおもちゃで
「なんだこれは」
教室のみんなは拍子抜けしたみたいに興味をなくす
先生も「誰だこんなくだらん悪戯をするのは」と怒りながらそのおもちゃを持って教壇へ戻った
なんてことはない
ただの悪戯
そんな風に見える些細なものだけど、俺の心臓はやたらと早く脈打つ
だって小川さんがいつも一緒にいる友達には、そんな悪趣味な悪戯をする人なんていないから
「ほら、集中しろ。授業再開するぞ」
先生の声で、みんなは何もなかったように授業を再開する