誰も見ないで
第14章 文化祭
「……っ」
あまりに悲惨な光景になんでこんなことをしてるのも気づかないのか、と怒りすら湧き上がる
俺はにこにこ友人と談笑する木下さんを恨めしい気持ちで見つめた
すると俺の視線に気がついたらしい木下さんが嬉しそうに顔を綻ばせ
「渡辺君!」
と駆け寄ってくる
「さっきの体育、女子のところからも見えてたよ! すごいかっこよかった!」
ゴミ箱にあるものなんて気づいていない、知らない、と言うように只管視線をそっちに向けない
そんな頑なな態度に頭の中で毒づいて、そんな風に悪口を言う自分の心が真っ黒に染まってしまうような感覚になった
「……そう」
テンションの高い木下さんに、見合わないほど低いテンションで返事をする
だって悔しい
自分が何も出来なさすぎて
最近はそっけない返事を繰り返しているせいか俺への木下さんへの被害は減ったけど
「はぁ……」
1人家でため息をつく
今日のあれ、いつやったんだろ
俺がトイレ行った時?
体育がなんとかって言ってたけど、移動教室とかそういう隙を突いてなのかな
どうしたら
「うーん……」
そんな風に悩んではいるものの何も出来ずに時は経ち
その後も続いた嫌がらせを止めることは出来ないまま文化祭当日になってしまった