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誰も見ないで

第14章 文化祭


「きゃーーっ! かっこいい! かっこよすぎ!」


目の前で携帯を構えてパシャパシャ繰り返しシャッターを切る木下さん

燕尾服の俺はそれを拒むことも出来ず、きょろきょろと視線だけを動かす


瑞稀君
瑞稀君

は、どこ

いた!


「!!!」


身長の低い瑞稀君は他の人に埋もれるように隅っこで小さくなっていた

服に着られるって表現が似合うほど、ちょっとかっちりしすぎてる服装で袖のボタンを弄っている


かわいい!!!!
かわいすぎる!!!!


木下さんと似たような感想を心の中で叫びつつ


どうにかしてあの格好の写真を撮ることは出来ないかな、と考える


クラス写真とか
卒業アルバムの写真撮ってる人達とか

そういうんでいいから、何かしらあの姿を俺の記憶以外でも残したい


でもやっぱりまずは記憶に、と遠くからその光景を角膜に焼き付ける

すると、自然と視界に入った人物


小川さん……


小川さんは袖のボタンが留められないらしい瑞稀君をすごく気にしてる

気にしてるけど、何故か一歩も動かずに見ているだけで


「……」


俺はさっきまでの自分のテンションが嘘のように下がっていくのを感じた

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