誰も見ないで
第14章 文化祭
「あんたほんと使えないよね」
「……すみません」
ドアから出ただけじゃ見えない死角でされるその会話は、明らかに一方的に怒りをぶつけるようなもの
あれ……?
なんか声が……少し、違う……
「なんであれぐらいで何も出来なくなっちゃうわけ?」
何も出来なくなる?
一体誰が、何を話してるの
「もっとさぁ、頑張って邪魔してくんないと困るんだよ」
邪魔……
「聞いてんのかっ……」
「い、た……っ、痛い……」
ジャリ、と砂を踏む音が響く
暴行を加えているような、そんな音に不安になって
つい物陰から2人の様子を伺った
すると
「!!!!」
そこにいたのは当初の想像通り木下さんと小川さん
ではあったんだけど
暴行を加えていたのは、何故か小川さん
なんで……!?
木下さんの髪の毛を手で思い切り掴んで引っ張っている
俺は予想外の展開に惑わされながらも2人を止めに入る
「やめろよ!」
「!」
「!?」
2人が弾かれるように俺の方を見て、目を見開いた
「渡辺君!?」
「なんでこんなところに……っ」
掴んでいた手を離させると、木下さんは相当痛かったのかその場に座り込んでしまう